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今年もインフルエンザの季節がやってきました。横浜市でも区によっては流行が始まっています。
インフルエンザウイルスは飛沫感染 (咳、くしゃみなどで飛び散る液体【飛沫】の中に、病原体がいて、それによって感染すること)なので、手洗いやうがいが、感染予防に有効です。また患者とそうでない人の隔離は最低限カーテンの仕切りで可能とされています。インフルエンザウイルの消毒は70%のエタノール(アルコールの一種)や0.5から0.05%の次亜塩素酸による消毒で不活化できます。
予防は、ワクチンが打てるなら、ワクチン接種が有効で、そのほか手洗いなどが有効です。
さてではインフルエンザにかかってしまった場合はどうしたらよいのでしょうか?まずは医療機関を受診し、インフルエンザかどうか診断をつけてもらうのが重要です。
現時点で、日本国内で使用可能な抗インフルエンザウイルス薬は以下の5種があります。
1.ザナミビル ( 商品名 リレンザ ) 5日間 吸入製剤
2.オセルタミビル ( 商品名タミフル、オセルタミビル ) 5日間 内服製剤
3.ペラミビル ( 商品名 ラピアクタ ) 点滴製剤
4.ラニナミビル ( 商品名 イナビル ) 1回吸入製剤
5.バロキサビル ( 商品名 ゾフルーザ ) 1回内服製剤
2018年3月に一回だけ内服で治療が完了するということを特徴として5.のバロキサビルが発売(処方可能)になりました。手軽さがあるものの12歳以下の小児では投与前後でバロキサビルに23%薬剤耐性(バロキサビルが効きにくくなる)が出現しております。
また、バロキサビル低感受性株についての解析がなされていますが、低感受性株出現の予測因子として、基礎のインフルエンザ中和抗体が有意に低値であることが報告されています。以上よりインフルエンザに対する免疫能の低い幼児や免疫不全患者では、バロキサビル使用後に低感受性ウイルスの出現リスクが高くなるものと思われます、と解説があります。
12歳以上の小児と大人ではどうでしょうか?報告によるとバロキサビル投与前後で9.7%のバロキサビル耐性が検出されています。
そこで日本感染症学会はこの薬(バロキサビル)について2019年10月24日、以下のような提言をしています。
(1) 12-19歳および成人:臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない。
(2) 12歳未満の小児:低感受性株の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する。
(3) 免疫不全患者や重症患者では、単独での積極的な投与は推奨しない。
最初に発売になった抗インフルエンザ薬である5日間吸入するザナミビル(商品名 リレンザ)は、外来で48時間以内に治療を開始した場合には、成人での研究解析結果により、罹病期間の短縮、症状の軽快が証明されています。健康な小児では、罹病期間の短縮を認めましたが、合併症防止の有効性は証明されていません。なお、B型インフルエンザには、ザナミビルの効果が高いとする報告があります。重症例や肺炎や気管支喘息の合併例では、吸入の効果は限定的あるいは気管支攣縮を惹起する可能性が考えられるため避けるべきです。
ザナミビルは、現在までザナミビル耐性の報告はほとんど見られません。
一時期10代のインフルエンザ患者に対して使用が中止となっていたオセルタミビル( 商品名 タミフル、オセルタミビル )ですが、2018年8月21日厚生労働省から再び10代への使用が許可されている薬剤です。5日間内服で治療完了となります。
全世界で使用され、最もエビデンスのある薬剤です。海外での成人及び小児における研究で、罹病期間短縮、合併症防止が証明されています。オセルタミビルの内服により、消化器症状として下痢は減少しますが、嘔気、嘔吐が増加します。
低年齢小児のB型インフルエンザでは、オセルタミビルの効果が減少したことが報告されています。一方、10歳前後の小児では、オセルタミビルとザナミビルの効果について、A型インフルエンザのH1N1株, H3N2株ならびに B型インフルエンザで有意差は見られませんでした。
国立感染症研究所の抗インフルエンザ薬耐性サーベイランスによると、オセルタミビル耐性株の出現率は、A型インフルエンザの(H1N1)pdm09株で0.8%であり、A(H3N2)株およびB型では検出されていません。ただし5歳以下ではA型の11.8%に耐性 が認められたとする海外の報告もあります。
ペラミビル(商品名 ラピアクタ)は、唯一の点滴の抗インフルエンザ薬です。入院患者さまで口から飲めない、吸入もできないような患者様に点滴として行われたりします。
ペラミビルは、健康成人において、偽薬であるプラセボ群と比べて、インフルエンザの罹病期間の短縮と日常生活復帰までの時間を短縮させ、オセルタミビルとの比較試験で非劣性(劣っていない、すなわち同じような効果があること)が示されています。ただし、肺炎、気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎などのインフルエンザ合併症の予防効果は証明されていません。点滴で使う薬なので、経口摂取が困難な患者や入院症例では有用と思われますが、インフルエンザ入院患者において、プラセボ群(偽薬で治療の行為をしたグループ)に対する有意な有効性は確認されませんでした。小児では、2009年の豚インフルエンザ(A型インフルエンザH1N1パンデミック株)の際に実施された試験で、臨床的、ウイルス学的に有効と考えられました。また、ペラミビルはインルフエンザA型に対しては伝播抑制効果に優れていたことが報告されています。
ペラミビルを外来患者に対して使用する場合は、経口薬や吸入薬等の他の抗インフルエンザ薬の適応を十分考慮したうえで、静注治療が適用と医師が判断した場合に行います。外来での点滴静注に際しては、患者の滞在時間を考慮し、特に診療所等で有効空間が狭い場合では、飛沫感染予防策など、他の患者へのインフルエンザ感染拡散の防止策を考慮することが必要です。
国立感染症研究所の抗インフルエンザ薬耐性サーベイランスによると、耐性株の出現率は、オセルタミビルと同様に、A型インフルエンザ(H1N1)pdm2009株で0.8%であり、A(H3N2)およびB型では検出されていません。しかしながら、カナダからの報告では、抗ウイルス治療を受けていない免疫不全者から、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビルに耐性のB型ウイルスが検出されています。
ラニナミビル ( 商品名 イナビル )については, A型インフルエンザのH1N1ソ連型株の流行時に、成人でオセルタミビルへの非劣性(有効性で劣っていない、すなわち同等の効果はある)が確認されています。この流行では、大部分のH1N1ウイルスは、オセルタミビルに耐性でしたが、ラニナミビルで治療した患者群とオセルタミビルで治療した患者群との間で、罹病期間に有意差は見られませんでした。しかし、小児では、ラニナミビル治療群の罹病期間はオセルタミビル治療群に比して、60時間以上短縮して有効性が著明に高い結果が得られました(44.3時間 vs. 110.5時間, P< 0.001)。A(H3N2)とB型インフルエンザでは、少数例の解析ではありますが、オセルタミビルと比較して罹病期間に有意差はありませんでした。小児での治験結果は、H275Y変異のある季節性H1N1ウイルスが流行した場合は、ラニナミビルの使用が有用であることを示しています。
ラニナミビルは、海外での第Ⅱ相試験においてプラセボと有意な有効性が得られなかったことにより海外での発売が中止となり, 使用できるのはわが国のみとなっています。その後のわが国でのサーベイランスでは, 臨床的有効性が継続していることが報告されています。
確実に吸入ができれば, 1回の治療で完結できます。また、ザナミビル同様、耐性は報告されていません。吸入薬なので、重症例や肺炎、気管支喘息合併例では使用すべきではないと思われます。
喘息や肺炎のない、確実に吸入できる小児では使用を考えてよいと思われます。
2019年6月にイナビル吸入懸濁用160mgセット(ネブライザーで噴霧吸入する薬。飲んだり注射したりしてはいけません。)が発売となりました。臨床試験において、プラセボ群に比して、インフルエンザ罹病期間の短縮が報告されています。
以上が日本感染症学会からの抗ウイルス薬についても提言であります。
続いて、2019年12月1日現在の横浜市でのインフルエンザの流行状況などについてです。現在A型が95%を占めておりその内訳は、2009年に流行したH1N1pdm株がその多くを占めています。
薬剤耐性については国立感染症研究所からの発表によりますと、5日間内服するオセルタミビルと点滴薬のペラミビルで0.9 % の耐性報告がみられますが、高い頻度のの耐性株の報告はいまのところありません。
ワクチンや手洗いうがいでインフルエンザを予防し、それでも体調がすぐれないときは医療機関を受診しましょう。
(国立感染症研究所のホームページより)